大切なこと

 
 
 

 

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ほんとうの世界は、無垢。

 

音大に入った。高校2年で学校を中退してから、6年振りにどこかに所属した。高校を中退してからは、いろいろ放浪をしていたが、何も予定がない時が多々あった。何もなく、誰とも会わず、ただ過ぎていく日々。自分は何をして生きていけばいいのか、親にも、自分にも申し訳ない気持ちになっていた。たまに、旅やバイトをしていたが、10代なりに葛藤していたと思う。平日や休日の区別もなかった。何もないも良いが、苦しい。

 

音大は、土日を除き、毎日ある。自分でスケジュールを組み、毎週のピアノレッスンと様々な授業を受けていく。どこにもいくあてがない時に比べれば、毎日行く場所があるということは、幸せだ。が、実際に行ってみると、大変である。毎日毎日同じ場所に通うのだから。逃げて、解放されたくなる。

 

結局、どちらの生活にも、幸せと苦しさが内包されている。幸せと苦しみは紙一重なのかも知れない。要は自分次第なのだ。

 

だが、本当の本当は、それらは全部甘えである。俺は本当の苦しさを知らない。本当の厳しさを知らない。世界には、もっと俺より苦しんでいる人がいる。世界には、計り知れない厳しさを持つ自然があり、そこで生きる動物がいる。都会にいると、忘れてしまうその事を、忘れずに生きていきたい。

 

THE PRESENTSに、嬉し恥ずかし穀潰しという曲があるが、その一節に

「幸せになるために生きているんじゃなくて 生きていることが幸せなんだ」という言葉がある。これを自分自身に言い聞かせたいと思う。僕の命は、僕だけのものではない。数珠繋ぎの命なのだ。

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高校を中退した時の一つの目標に、ピアノで生きていくこと、があった。九州から、一人関東まで行き、ピアノの先生に付き、習っていた。しかし、苦しくなって、半年も立たずして投げ出してしまった。

 

6年の時を経て、再びそこに挑戦しようとしている。もう僕のピアノは僕ひとりのものではない。僕にとってピアノは、数珠繋ぎのピアノなのだ。だが苦しい。しかし、岡本太郎も言っていた。「本当に良い人生とは、苦しい人生に耐え、そして素晴らしく挑むこと。」苦しみを苦しみと思わず、そこに正々堂々、清々しく、荘厳に立ち向かって行きたいと思う。死ぬ時に後悔していなければ、それでいいのだ。

 

自然は壮大だ。音楽は壮大だ。その中には、苦しさや厳しさをも含まれた、美しさがある。苦しみを超え、厳しさを超えた人間にならなくてはと思う。

 

本当に大事なこと、それはピアノを弾くことではない。全人間的に生きることだ。それは、日々を豊かに生きることである。人間の心は、とても単純で深い。日々のほんのささやかなことに、幸せを感じる。僕はそんなささやかな事を、大事に、大事に生きていきたいと思う。流れていく、この時に寄り添える、ピアノを奏でていきたいと思う。

 

 

 

空っぽ。その中に全てがある。

 

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